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尊厳死宣言公正証書


尊厳死宣言公正証書


尊厳死とは

尊厳死とは、端的にいうと、人としての尊厳を以て死を迎えることをいいます。

現代は、医療技術が高度に発達したがために、以前であれば死んでいたはずの重症患者が、人工呼吸装置などの機械によって、ただ生かされているに過ぎないという状態が増え、結果として、延命治療が患者を長く苦しめるだけで、安らかな死を迎えることを阻害するに過ぎないという場合が多くあります。

また、その家族にとっても、植物状態のまま、回復見込みがないのに寝たきりのまま人工呼吸器により何年間も延命措置だけを続けている状態は、物心の両面で多大な負担となり、とても耐えがたく辛いものになります。

そのような事情が背景にあり、傷病により「不治かつ末期」になったときに、自分の尊厳ために、そして大切な家族のためにも、自分の意思で、単に死にゆく過程を引き延ばすだけに過ぎない延命措置を拒絶し、人間としての尊厳を保ちながら死を迎えることを選択出来るようにするべきであるという考えから発展してきたものが「尊厳死」というものです。


昨今、自分の望む形で最期を迎えるための「終活」がブームとなっており、日本公証人連合会(日公連)が初めてまとめた年間統計では、2018年に1906件作成され、2019年6月末時点では、前年同期比で約25%増加となっています。


尊厳死と安楽死

「尊厳死」は、広義の意味としては、安楽死の類型の一つとして「自発的な消極的安楽死」と定義される場合があります。

狭義の意味においては、安楽死は、「不治かつ末期」で「耐えがたい苦痛」を伴う疾患について、主として「苦痛からの解放」を目的として延命治療を中止することであるのに対して、尊厳死は「不治かつ末期」の患者の意思に基づき、「人としての尊厳」を目的として、死を迎える方法を選択することをいいます。


医師には、患者の生命を守り、最大限の治療をすべき義務がありますので、本来は延命に全力を挙げるのが仕事です。
そのため、いくら患者の意向であったとして、個人的な判断で命を縮めるような行為をすれば、殺人罪(刑法199条)ないし、自殺幇助、嘱託・承諾殺人罪(刑法202条)などの犯罪に問われる危険を負う可能性さえあります。

現在、日本においては、「安楽死」を認める法令はありませんが、判例上、一定の場合に、違法性が認められないとして刑事責任を免れます。


■裁判所が認める「違法性阻却要件」
名古屋高裁 昭和37年12月22日判決
(1)病者が現代医学の知識と技術から見て不治の病におかされ、しかもその死が目前に迫っていること
(2)病者の苦痛が甚だしく、何人も真にこれを見るに忍びない程度のものとなること
(3)もっぱら病者の死苦の緩和の目的でなされたこと
(4)病者の意識がなお明瞭であって意思を表明できる場合には、本人の真摯な嘱託・承諾のあること
(5)医師の手によることを原則とし、医師により得ない場合には特別の事情があること
(6)その方法が倫理的にも妥当なものとして認容しうるものであること
横浜地裁 平成7年3月28日判決
(1)患者が耐え難い肉体的苦痛に苦しんでいること
(2)患者の死期が迫っていること
(3)患者の肉体的苦痛を除去・緩和するために方法を尽くし、他に代替手段がないこと
(4)生命の短縮を承諾する患者の明示の意思表示があること

なお、スウェーデン等の欧米諸国では、高齢や末期がん等で自発的に栄養を取ることが出来なくなった場合に、胃ろうや点滴、人口肛門などの方法によって延命を図ることは非倫理的であり、生命への冒涜であるとの考え方があり、実際、このような終末期の延命治療は行っておらず、その結果として、寝たきり老人というものが殆どいないそうです。
また、抗がん剤による延命治療には公的扶助の給付が無く、安楽死のための投薬費用については全額の公的給付があるのです。




「尊厳死」に関しては、法令上の整備がなされておりませんので、遺言のように方式の規定もなく、方法に決まりはありません。

そこで、患者本人の意思を実現するために、意思表示を明らかにしておく必要性があり、そのための手段として考案されたのが「尊厳死宣言書」なのです。

「リビング・ウィル」=「生前発効の遺言」ともいわれます。

「尊厳死宣言書」を作成して示した場合、医師による尊厳死許容率は、実に95%を超えるというアンケート結果ふが出ています。
れが公正証書での作成となれば、更に


尊厳死宣言の方法

日本では、まだ尊厳死に関する法律が存在しない為、あとで紛失や改ざんなどのトラブルが生じないよう、一定の信頼を得られる方法を取る必要があります。

尊厳死宣言の方法としては、尊厳死宣言書を公正証書として作成し、公証役場に保管されるか、日本尊厳死協会へ加入して、尊厳死宣言書を保管してもらう、という2種類の方法があります。

なお、遺言の場合と同様、自筆の書面ですと、将来的に、本人が書面内容をきちんと理解した上で、自分で署名捺印をしたのか、という争うが生じる可能性があります。
そして、延命治療を要するような重篤な状態であれば、意識不明になったり死亡されたあとでは、本人の意思を確認することが出来ません。
よって、出来る限りは、公正証書で作成する方が安全です。

なお、公正証書の場合、耳が聞こえない言葉を発することができない目が見えない、などの場合、公証人への口授、通訳人の手話や筆談、または、公正証書そのものを遺言者及び証人に閲覧させる方法、等によって作成することが可能です。
また、けがや病気、もしくは高齢などの理由で文字が書けないという場合であっても、公証人が文書を作成して、署名欄についても公証人による代筆が認められています。


尊厳死宣言公正証書に定める事項


尊厳死宣言公正証書に記載すべき事項としては、以下のようなものがあります。


延命措置拒絶の意思表明
延命治療を拒否して苦痛を和らげる最小限の治療以外の措置を控えてもらい、安らかな最期を迎えるようにして欲しいという希望を明示します。
尊厳死を望む理由
尊厳死を希望する理由を明示します。
「安らかな死を迎えたい」「残された家族への介護や経済上の負担を与えたくない」など
理由を記載することで、家族や医療関係者への説得力が増します。
家族の同意
尊厳死宣言書を作ったとしても、その家族が延命措置を希望する場合、医師は、これを無視して延命措置の停止を講じることが極めて困難になります。
そのため、出来る限りは家族と話し合って、同意を得た旨も記載しておくことが大切です。
医療関係者に対する免責
家族や医療関係者らが法的責任を問われることのないように、警察、検察等関係者の配慮を求める事項も必要です。
医療関係者に安心を与える意味では、刑事責任のみならず、民事責任をも免責する記載をすることが重要です。
尊厳死宣言の有効性
尊厳死宣言書の作成時、心身ともに健全であたこと、および、自分で破棄・撤回しない限り効力を持ち続けることを明記しておきます。

未成年の尊厳死宣言

「尊厳死宣言書」は、民法961条で遺言能力が認められている年齢(15歳)に達していれば、単独での作成が可能と考えられていますが、未成年者が公正証書を作成する場合においては、その法定代理人(両親等)の同意書が必要となります。


厚生労働省によるガイドライン

厚生労働省は、2006年3月の富山県射水市における「人工呼吸器取り外し事件」報道を契機として、国としてはじめて、2007年に「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」という指針を作成しました。
2015年3月に名称を「人生の最終段階の決定プロセスに関するガイドライン」に変更し、さらに、2019年3月14日に改定が行われております。

「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」[PDF:101KB]

「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」解説編[PDF:210KB]



延命治療を求める場合

尊厳死とは、必ずしも、自然なままでの死を求めるという趣旨ばかりではありません。
食事を口から摂れなくなった場合には、胃ろうへの注入食や点滴を行って欲しいとか、心肺停止に至った場合には、人工呼吸や心臓マッサージ、気管挿入や高濃度酸素、薬剤を使用するなど、最大限の心肺蘇生を行って欲しい、など、具体的に望んでいる対処方法を明記することも可能です。


尊厳死宣言の破棄・撤回

尊厳死宣言を破棄・撤回する場合、公正証書の作成その他、特別な手続きは必要としません。
必要に応じて、自分で意思表示が出来なくなった場合のことも考え、いつでも、破棄や撤回の意思を家族や医師に伝えられる仕組み作りも重要になることがあります。



尊厳死宣言公正証書の文例・見本・雛形