LGBT/セクシュアルマイノリティ


公正証書net


公正証書

死因贈与契約公正証書


死因贈与契約公正証書

死因贈与契約公正証書とは、死亡に伴なって生じる虞のある諸問題について、トラブル予防を目的として約束事を取りまとめた契約書を公文書化したものです。


■「遺贈」と「死因贈与」

財産を相続人が引き継ぐ場合を「相続」といいますが、他人に引き継がせる方法としては、「遺贈」と「贈与」があります。

相続は、何らの定めをしていなくても、法律上当然に生じるものですが、引き継ぐ者は法定相続人に限られます。

遺贈と死因贈与は生前に意図的に財産の所有権を移転するものであり、引き継がせる者は法定相続人に限られません。

「遺贈」と「死因贈与」は、いずれも「贈与」の一種であること、および、贈与する者の死亡によって効果が生じるという点では同じです。

「死因贈与」には、その性質に反しない限り、「遺贈」の規定が準用されると民法で定められています。

「遺贈」と「死因贈与」は、いずれも負担付にすることが出来ます(「負担付遺贈」「負担付死因贈与」)。


■遺贈とは

「遺贈」とは、遺言によってする贈与のことをいいます(民法964条)。

遺贈は遺言であるため、遺言者が15歳以上であれば行うことが出来ます。

遺言であるため、贈与者の意思のみで足りる「単独行為」であるため、受贈者の同意承諾は不要ですが、書面(遺言書)の作成が必要になります(民法967条、976条から979条)。

贈与者が「遺贈」による贈与を撤回したいときには、いつでも自由に撤回することができますが、この場合も書面によって行う必要があります(民法1022条)。

受遺者は、贈与者が亡くなり、自己が遺贈を受けることを知ってから3か月以内であれば自由に放棄することができます。

自筆証書遺言や秘密証書遺言であれば、受遺者に内容を知らせず秘密にしておくことが出来ます。

■死因贈与とは

「死因贈与」とは、贈与する者の死亡によって効力が生じる、生前の贈与契約ことをいいます(民法554条)。

死因贈与は契約であるため、当事者双方が20歳以上である必要があります。

契約であるため、贈与者の意思のみでは成立せず、受遺者の同意承諾が必要がありますが、必ずしも書面を作成する必要はありません(最判昭和32年5月21日)。

贈与者が「死因贈与」による贈与を撤回したいときには、必ずしも書面によって撤回する必要はありません(最判昭和47年5月25日)。

ただし、書面によらない贈与は民法550条の規定により、履行が終わっていない限り自由に撤回することが可能です。

また、受遺者から負担の全部に類する程度の履行がされた場合には、やむをえないと認められる特段の事情がない限り、贈与者は「負担付死因贈与」を撤回することはできません(最判昭和57年4月30日など)。

受遺者は一方的に贈与を放棄することは出来ません。

受遺者が事前に内容を知ることになるので、秘密にしておくことは出来ません。


注意事項

■受遺者が贈与者より先に死亡した場合

受遺者が贈与者より先に死亡した場合、遺贈の場合は代襲相続の規定が適用されるため、受遺者が死亡した場合には受遺者の相続人が承継しますが、死因贈与の場合は代襲相続の規定が適用されませんので、贈与契約は効力を失います。


■不動産の贈与

遺贈においては、遺言者の生前に所有権移転仮登記をすることは出来ませんが、不動産の死因贈与契約では、贈与者の生前に「死因贈与契約による仮登記」をすることができます。

死因贈与契約書が公正証書により作成されていて、証書に仮登記義務者が所有権移転の仮登記を申請することを認諾している旨の記載があるときは、仮登記登記権利者が仮登記を単独で申請をすることができ、仮登記義務者の印鑑証明書の添付が不要です。

また、所有権移転の本登記においても、死因贈与契約書が公正証書で作成されていて、受遺者が執行者に指定されていれば、受遺者が単独で死因贈与による所有権移転登記を行うことができます。

不動産所有権移転にかかる登録免許税は、「相続」または「遺贈」の場合は評価額の0.4%で済みますが、「死因贈与」の場合は、法定相続人であっても評価額の2%となります。

不動産取得税については、法定相続人への遺贈の場合は課税されませんが、死因贈与の場合は、法定相続人であっても評価額の4%(平成30年3月31日までは3%)課税されます。

※遺贈が特定遺贈で、相続人以外の人へ遺贈の場合は不動産取得税が課税されます。


死因贈与契約公正証書に定める事項

一般的に定めることが多い項目

贈与する特定の財産、または財産割合の定め
贈与に伴って求める義務や負担がある場合は、その定め
執行者の選任または執行者選任の委託
不動産所有権移転の仮登記の承諾の定め