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保証契約の制限(事業用融資・根保証契約)


保証契約の制限(事業用融資・根保証契約)

個人の根保証契約、および事業用融資に関する保証契約においては、民法上、以下の4つの規制があります。

個人の根保証人の保証範囲の制限
事業用融資の保証人になる場合は公正証書が必要
保証人に対する情報提供義務
連帯保証人への請求が主債務者に影響しない

保証契約の種類

「保証契約」とは、借金の返済や代金の支払などの債務を負う「主債務者」がその債務の支払をしない場合に,主債務者に代わって支払をする義務を負うことを約束する契約をいいます。

「連帯保証契約」とは,保証契約の一種ですが、主債務者の収入や資産の有無に関わらず、債権者が保証人に対して支払を求めたり、保証人の財産の差押えをすることができるという契約です。

「根保証契約」とは、継続的な売買や賃貸借の契約、フランチャイズ契約。など、一定の取引関係から生ずる現在および将来の一切の債務を保証する契約のことをいいます。


(1)個人の根保証人の保証範囲の制限

例えば、賃貸借契約に基づいて、賃借人が負う、将来的な賃料および故意または過失によって生じた損害賠償債務など、契約から生じる債務をすべて保証する契約のことを「根保証契約」といいます。

個人が保証人となる場合で、極度額(上限額)を具体的に定めなければいけません。

極度額を定めていない根保証契約は無効となります。
そして、債権者は、設定された極度額を超えた損害が発生しても、個人の連帯保証人に対し、この極度額の上限までしか請求することができません。

また、元本確定事由が生じた場合、連帯保証人の負うべき債務の元本は確定し、元本確定事由の発生後に生じた債務について、個人の連帯保証人はその責任を負いません。

元本確定事由

1.債権者が、連帯保証人の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての
  強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。
2.連帯保証人が破産手続開始の決定を受けたとき。
3.主たる借主又は連帯保証人が死亡したとき。


(2)事業用融資の保証人になる場合は公正証書が必要

事業用の融資について、個人が保証人になろうとする場合には、公正証書の作成が必要です。

ただし、主債務者が法人で、その法人の取締役や議決権の過半数を有する株主である場合、または、主債務者の共同事業者、主債務者の事業に現に従事している主債務者の配偶者などが保証人となる場合には、公正証書は不要です。


(3)保証人に対する情報提供義務

A 主債務者の情報提供義務

個人が連帯保証人になる場合、主債務者は以下の情報を提供しなければなりません。

  1. 主債務者の財産及び収支の状況
  2. 主債務者が主債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況
  3. 主債務者が主債務について債権者に担保を提供するときはその事実および担保提供の内容

主債務者が個人の連帯保証人へ情報提供をしていない、または事実と異なる情報提供をしたために、個人の連帯保証人が誤認をし、それによって保証契約の申込み、または承諾の意思表示をした場合において、債権者が、個人の連帯保証人が情報提供を受けていない、あるいは誤認していることを知り、または知ることができたときは、個人の連帯保証人は、債権者に対して保証契約を取り消すことができます。




B 債権者の情報提供義務

債権者は保証人から以下の内容について問い合わせを受けたときは、回答しなければなりません(民法458 条の2)

  1. 主たる債務の元本および利息について
  2. 違約金について
  3. 損害賠償について
  4. 債務の不履行の有無と滞納額ついて

債権者は、主債務者が期限の利益を喪失したとき、連帯保証人へ通知しなければなりません。

通常、契約により、●●日締めの●●日払などと、支払期限までの猶予(利益)を定められています。

民法上、債務者の破産など一定の事情が生じた場合、期限の利益が喪失し、直ちに支払う義務が生じます。
また、契約の約款によって、「2ヶ月分以上怠ったとき」等、直ちに残額を一括で支払わなければならない旨の定めがあります。

この「期限の利益」を失って直ちに一括弁済しなければならない状態のことを「期限の利益喪失」といいます。

債権者は、主債務者が期限の利益を喪失したときは2ヶ月以内に連帯保証人に通知することが義務付けられました。

もしも、この期限内に通知いなかった場合、債権者は、連帯保証人に対して、期限の利益喪失した後の遅延損害金などを請求することが出来なくなります。


(4)連帯保証人への請求が主債務者に影響しない

従前は、債権者が連帯保証人に対して請求すれば、この効果は債権者にも及び、主債務者にとっても時効が完成せずに猶予されました。

しかし、2020年4月1日施行の民法改正により、債権者が連帯保証人に対して請求をしても、主たる債務者に対して何も請求しなければ、主たる債務の時効の完成は猶予されないことになり(民法458条)、一定の期間が経過すると、そのまま主債務者は、時効が完成して返済の義務を免れることになります。